私の涙が収まるとルイは私の瞳に残る涙を親指で拭い、私から離れて教官達が立っている場へと近づく。


「さて、これで貴殿方は満足して頂けましたかな?
──ユライアは私の部隊へと配属する。
異論は無いであろう?」


ルイは教官達に目を配らせると、教官達はルイに敬礼をして返事をする。
だが、敬礼を返す教官達を他所に理事長だけは、難色を示す表情だった…


「ルードヴィッヒ殿下、ブラント君──否、ユライア姫はこの国で保護なさるべきお人では?」


理事長の言葉は一番聞きたくなかった話題だ。


「理事長、先程までの私達の話を聞いていなかったのかい?
彼女は何の為に名を偽り、性別を偽ってまで士官候補生となっているかを!」


ルイは私を庇い、声を荒げて理事長に抗議してくれている…


「帝国に復讐を…
そういう事でありましょう?
だが、それは一般人なら大いに認められる話です。
ですが、ユライア様は姫君で在らせられる」


「確かに私はフュルステンヴェルグの王女です。
しかし、今となっては亡国の姫です。
亡国の姫なんかに何の後ろ楯も無いのです…
だから、今の私はただの一般人と何の変わりありません。
それでも駄目なのですか?」


せっかくここまで来たというのに、これで全て終わってしまうのは嫌だ!
そんな想いで私は、必死になって理事長へと訴えた。


「貴女様がただの亡国の姫だったら、それも良いかもしれません。
しかし、貴女様はフュルステンヴェルグの姫君だ。
我がレストア皇国とフュルステンヴェルグ王国は古き時代より盟約が交わされている。
レストア皇国ギュスター陛下とフュルステンヴェルグ王国ヨアヒム陛下は盟友で在らせられる。
ギュスター陛下は貴女に何の後ろ楯が無くても、ただ貴女が無事である事を望んでいる」


理事長からの言葉に何年か前にお会いしたルイのご両親──ギュスター陛下とアマリア皇妃を思い出した。
お二人はとても優しく、そして、とても皇族として威厳のある方達だった…


「それでも…
それでも私は、散っていった祖国の者達の為、父や母や兄の為にも立たない訳にはいかないのです!
きっと、両陛下も解ってくださります」


私は言いたい事を言って俯いてしまった。