「あんまり彼を追い詰めないでくれないかい?
言ったろ、彼の素性は私が保障すると…
ね?ユライア──」


懐かしい声と共に聞いたのは、紛れもなく私の本当の名だった。


「ルイ…」


「やっぱり、ユライアだね。
私をその名で呼ぶのは両親とユライアだけだ。
たが、例えその名で呼ばなくても、私が君を間違える筈はない。
そうだろ?
私の愛しき姫よ…」


ルイは私のもとへ近づくと私に跪き、手をとり口付けをした。
その光景をぼうっと見ていたが、手に口付けられたルイの唇の感触に気付き、慌てる。


「ル、ルイッ──」


慌てる私に対して、ルイは平然とした態度で立ち上がった。


「という訳ですので、彼──否、彼女の素性は、ハッキリしたでしょう?
君達もこの国に住んでいるならば、耳にした事があるはずです。
今は無きフュルステンヴェルグ王国の王、ヨアヒム陛下の忘れ形見ユライア王女殿下は私の婚約者である事を…」


ルイによって語られた私の正体。
それは帝国に滅ぼされた祖国フュルステンヴェルグの姫であると…