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〇月△日

シンラ、貴方やダイさんを裏切ったことに、早くも母さん罰を受けたみたい。


今日、お腹の子の父親の家に行ってきました。


行く道中、久しぶりに母さん、かなり浮かれてました。


今までホテルに籠って泣いてばかりいたせいかもしれないけど、外の光が温かくて、彼とお腹の子と私と……また私にも家族が出来るって。


なんだか足取りが軽かったんです。


彼の家は、あの村ではなく隣村だったから、人目もあまり気にしなくても良かったし……


子供が出来た、私も新たに一歩を踏み出すから、御一緒にお願い出来ますか、そう告げるつもりだった。


なのに……


彼の家に着いて呼び鈴を押そうとしたら、家の中からまだ小さいだろう赤ちゃんの泣き声がした。


女の人がそれをあやす声、そして女の人は彼を呼んで、彼もまた一緒に赤ちゃんをあやしているのだろう楽しそうな声……


彼の奥さんは、浮気で一方的に出ていった、とだけしか聞いていなかったから。


奥さんとよりを戻したのか、それとも別の彼女なのか、それは私には分からないし、知る必要もない。


ただ間違いのないことは、彼にお腹の子の父親になってくれ、なんていえる雰囲気では到底ない、ということ。


私は彼に何も告げず、逃げました。


悲しい訳じゃない、そんな言葉を使う資格なんてきっとない。


寂しい、ただ寂しい。


本当に一人になってしまったんだ、と実感しました。


こんな私が母親なんかになっていいのか。


でも、お腹の子には私しかいない……そして私も。


私にも……お腹のこの子しか、傍にいない。


シンラ、貴方も父さんを亡くし、母さんを無くし……一人になってしまって寂しいんでしょうね。


ごめんなさい。


貴方には、会うことも出来ない、心の中で謝ることしか出来ない、謝っても謝りきれない……