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「……」


「……おーい……、聞いてるかー、シンラ~……」


「え!?

いや、その、なんだ……わり、聞いてなかった」


「も~……モモの話題を振った俺が悪かったよ。

頼むから回想や空想の類は、一人の時にやってくれ」


「はは……羨ましいか。

お前も早く、ノーゼンの王女にさ。

もっとアタックしたらいいのに」


「なっ……ばばば、馬鹿やろ、なな何言ってんでぇ!

スミとは、そんな……!」


「……分っかり易いなーお前も。

その分じゃ、手ぇ握ったことすらねえな?」


「てっ……てて、そんな、手ぇ握るだなんて、どどどうやって……」


……誤魔化す時は、この手に限る。


あ、ちなみにノーゼンとはウェスターの近隣国で、そこの王女スミカにケイゾウは惚れている。


技術に特化したその国では、まだ王様世代の現役王がバリバリに元気だけど、次期王位は多分、王女の兄である王子が継ぐだろう。


傍目から見ていても、まあ……王女は全くケイゾウに興味がない、とは見えない。


割といい感じだと思うのに……ケイゾウの奴は変なところがヘタレてるというか、押しが弱すぎるように感じる。


そして彼は、これしきの煽りで必要以上に焦ってしまい、おそらくは動揺を隠したかったんだろうけど、手に持った牛乳を一気にクイッと……って、彼は猫舌だ。


結果はまあ……御多分に漏れず。


「どわあぁあぁあ、あっ……ち~!!」


「……馬鹿だな、ほんと……」