「……お母さんの。

死に目に……あえなかったんだ……」


上目つかいで遠慮がちに言われて、ふと気がつく。


「……いや。

んなこたねえよ……や、今までの説明じゃそう聞こえるか、ん……わり。

俺も平常心モードじゃねえしさ、うまいこと話せねえんだよ」


「?

だってシンラ、倒れてたんでしょ」


「ん~……でも俺。

母さんを見送った覚えがあるんだよな。

夢だったんかな……それにしちゃ都合よすぎだけど。

起きてから、母さんが死んだって聞いた時も、違和感なかった」


「……?

うーん……お母さんもシンラも意識なかったから?

……だからかえって、お互い深いところで通じ合ったのかな……って、なんかちょっと、そう考えるとすごくない?」


彼女は、突拍子もないことを嬉しそうに言った。


案外、ロマンチストらしい。


薄く笑ってやった。


「なにか、お話とか出来たの?」


言われて、思考をあの夢みたいな空間に飛ばす。


夢かうつつか、はっきり分からないモヤモヤとした記憶。


「……俺のご都合的な夢、だと思ってたんだけどな。

母さんも同じ思いだったとしたら……嬉しいけど、ちぃと恥ずいな」