「……な、なんでいるのっ」

「なんでって俺も来ちゃ悪いかよ」

「来るなら来るって、さっき言ってくれればいいのに」

「気が変わったんだよ」

「もう、あの人独身だって言ってたのに。どうして、私の婚活邪魔するの」

「はぁ?今のが婚活?相手確実に50過ぎてたろ。本当、節操ねぇのな」

「そんなことない、私の見立てだと40半ばってとこ。全然許容範囲内」

「あれだけ婚活は休みだって言ってたのに忘れたか。大人しくしてるようだったから、夜も何もしないで大目に見てやってたのに」

そのセリフにあの恵比寿の和食屋さんでの一件を思い出しぼっと顔が熱くなる。

「わ、忘れてないっ。忘れてないけど、……チャンスだったのに、連絡先位交換したって」

「何だって?」

ボソッと小言を漏らすと、聞き捨てならないと鋭く聞き返される。
榊原さんの表情の雲行きが悪くなってきたところで、慌てて話を変えてプールに誘った。


「あ、せっかくプールに来たんだから泳がないと、ね。クロール競争する?私結構早いよ?」

「分かりやすく話そらしたな」

「ただ競争してもつまんないから、何か賭ける?」

「そんなに自信あんの?」

「ふふふ、ダイエットで鍛えた私のクロールとくと見せてあげるわ。もし私が勝ったら、その婚活制限ゆるくして」

「……いいよ。もし俺が勝ったら、これからはその体、契約通り俺に差し出せよ?」

「えっ、ま、待って、それはだめっ」

「自分から言い出したくせに、今更尻込みか?ダイエットで鍛えたクロール見せてくれるんだろ?」

「だってそんな条件あんまりっ」

「勝てばいいだけの話だろ、そしたら婚活できるんだから」

「そ、そうだけど、それにしたって……」


あぁ、もうこんな賭け言い出すんじゃなかった……っ。

榊原さんがパーカーを脱いで水着のハーフパンツだけの姿になる。
毎晩、その腕の中で抱かれて寝ていると思うと、途端に恥ずかしくなってきた。