……そもそもこのマンションって、高級ラグジュアリーホテルと一体型になっていてルームサービスとかベッドメーキングなんていうホテルサービスが受けられるらしい。

ホテルステイさながらの暮らしができる高所得者向けの賃貸物件なのだが、そんないたせり尽くせりのサービスがあるのに私をお手伝いさんで雇う意味ない。

朝起きるのに手間取る位で。ご飯だって、私が作るより格段に良いものが食べれそうなものを。

本当、この人の考えることはよく分からない。

あれこれ勘繰っている間に、榊原さんの方でもスパについて調べていたらしく「電話する?」って聞いてきた。

あー、だめだ、だめだ、この間から甘やかされっぱなし。
この人との贅の極みのような暮らしに慣れてしまったら、質素な元の生活に戻れなくなる。

断固として彼の申し出を断り、一人でジムとプールに行くことに。
スパはともかくその他のプール、ジャグジー、サウナ、ジムとかは別途料金なしで使えるようだったから。


37Fは、レジデンスの入り口にもなっていてフロントとロビーがある。
そこには品の良い、いつ見ても笑顔の素敵なコンシェルジュさんが24時間常駐していた。

そことは別区画にあるようで、少し奥へ進んだ白と黒を基調としたモダンなデザインとなっているクラブの入り口を見つけた。

このマンションと言って良いのかホテルと言って良いのか、この施設内を一人でうろうろするのは、場違い過ぎて本当に気が引ける。
やっぱり一緒に来てもらえば良かったと後悔。
VIPな人間しかいない世界に、一般庶民の小娘が一人で飛び込んでいくなんて心細すぎる。

エレベーターで降りた先、フロントのお姉さんと目が合ってにこっと会釈された。
私もにこっとぎこちなく笑顔で返す。
このフロントも最初こそは、いちいち名前を確認されていたが、今では46Fに住む榊原さんの同居人っていうことですでに顔パス状態になっていた。

もしかしたら、榊原さんの彼女とでも思われているのかもしれない。

うわー……、絶対似合わないって影で言われてる。
想像するとぞっと寒気がした。

だって相手の身なりと、私の身なりとではとてもじゃないけどつり合いが持てないもの。