「ご、ごめんなさい、も、もうギブアップ……っ」
「いいのここで終わって、もう少しじゃないの?」
もう少しって……?
「や、も、怖い。ほんと無理、お願い」
「怖い?」
「……っ?」
「お前、もしかして……」
「いっ、言っとくけど、初めてじゃないから」
ただ、こんな余裕のない追い詰められていく感覚が初めてっていうだけで。
「……住み込みでやってもらおうか家政婦兼、その愛人って奴」
ふと手が離れると、そう言いながら私の涙を拭う。
「え……っ?」
「月50万でどうだ」
ごじゅ……?
ゆっくり、息を整えて榊原さんに反論する。
金額もバカげてるけど、この私の情けない有り様を目の当たりにして、まだそんな提案ができるのか。
こんなんじゃ、とてもじゃないけど社長さんの愛人なんて務まりそうにない。
「わ……っ、わたし、やっぱり、できない」
「どうして?」
「だって、もう、今ので精一杯だもん……っ、嫌って、言っても榊原さんやめてくれないし……!」
泣きながら怒る私。息を切らしながら言葉も途切れ途切れにそう訴えた。
なのに、榊原さんはすごく嬉しそうな顔をしている。
「本当に嫌だった?」
「……っ」
「嫌なら一緒に寝るだけでも良い」
い、一緒に寝るだけで良い……?
愛人ってそういうことするの?
終わったらピロートークもさっさと切り上げられて、じゃお互いの現実に戻りましょうって感じじゃないの?
そういうお互いの都合が良い時だけ恋人のように振る舞う、そんなドライな感じじゃないの?
「俺と住んでる間は婚活はお休みな。他の男と付き合うのも、もちろん、体の関係を持つのも」
なんだろうか、この人は。私と恋人ごっこでもしたいのだろうか?
「……?それってどれ位?」
しかし、婚活のリミットが近づいている私にはそれは死活問題だ。
ぽーっとしていた頭が現実に引き戻される。


