「桜井さんは、結婚後の生活についてどのように考えていますか?仕事を続けたいとか、それとも家庭に入りたいとか」
いずれ様子を見ながら、切り出そうとしていた話題を相手からふられ、19連敗を元にして用意していたセリフを言う。
「私は……その時の人生の段階に合わせて仕事ができたら、と思っています。だから、もし結婚して子どもができた時には仕事を辞めて家庭に入りたいと思っています。私の両親が共働きで、小さい頃少し寂しい思いをしたので、自分の子どもにはそんな思いをさせたくないなって」
あくまでも専業主婦希望だけど、あからさまに金銭面で相手に依存しようとすると嫌われるため、体の良い理由を付けて家庭に入りたいと告げる。
まぁこれだけの年収になれば、金銭面で心配することがないから相手の仕事なんてどうでもいいんだろうけど。
それでも高収入の人は、相手が家庭に入ったとしても夢や目標を持って生きて欲しいっていう人が多い気がする。
おそらく結婚しても自分に頼ってばかりではなく、相手にも自立心を持ってもらい対等な関係でい続けたいっていうことなんだろうけど。
正直、寄生する気満々の私には理解できない。だって自立心って必要?
私は、お金さえ与えててもらえば相手の言うことなんでも聞くし、ペット位の扱いにしてもらって全然構わないんだけど。
「榊原さんはどうお考えですか?」
「私は本人の好きなようにしてもらっていいと思っています。家庭に入ってもらってもいいし、仕事を続けてもらっても全然構いません」
「東京に住んで生活に余裕を持って暮らしたいとなると、なかなか専業主婦って難しいと思うんですけど。その辺りは、さすが寛容でらっしゃいますね」
そう言うと、え?と聞き返され、思わず具体的な数字を言ってしまう。
「だってすごいですよね、8000万って」
「あぁ、すいません、それ適当で。そもそも年収って概念がなく、利益を給料で取るか会社に残すかなんで。自分のところに入るのは大体それ位かなって」


