そしてやってきたお見合い当日。
その日は、六本木にある誰もが知る高級ホテルのラウンジカフェで待ち合わせ。
あらかじめ相談所から予約されていた席へ座って待つ。

すると、ウエイターさんと一緒に背の高い男性が近づいて来た。
視線が合って会釈され、慌ててぺこりと頭を下げて返す。

……てっきりデブかハゲが来ると思っていたのに。
目の前に現れたのは、思わず目を疑いたくなるようなイケメン。
紺色の高そうなスーツを嫌味なく着こなしている。

これで社長、年収8000万って信じられない。

今までのお見合い相手もそれなりに、皆エリートでセレブな人達だったけど。
彼はそれをはるかに上回る。

まさに別格、雲の上のような人ってこういう人のことを言うんだ……。


「桜井さんですか?」

と、声をかけられ、上ずった声で返事をし慌てて立ち上がる。

あまりにも不相応な相手に逃げ出したくなるも、ここで恐れおののいている場合じゃない。
これがラストチャンスにして最高の相手、この人を何が何でもモノにしたい。

静かに息を吸って、鏡で研究し尽くした、自分にとって一番綺麗に見える笑顔を作る。
そして、両手を揃えて丁寧にお辞儀した。

「桜井と申します。今日はお忙しい中、時間を割いて頂きありがとうございます。よろしくお願いします」

「いえいえ、こちらこそ。榊原といいます、よろしくお願いします」

そう言って爽やかに笑う彼。切れ長な目に、すっと鼻筋の通った高い鼻、そして形の良い唇。
近くで見ても文句のつけようがない完璧なイケメンだった。

お互い席に着いたところでウエイターさんが声をかけてくる。

「お飲み物はいかがなさいますか?」

「桜井さん、決まってますか?」

メニューを開き、二人で見ながら聞かれる。
煩わせることがないよう、あらかじめ決めていた飲み物を頼んだ。

「あ、はい、レモネードを」

「あと、アイスコーヒーをください」

緊張感で吐きそうな程の動悸を抑え、一呼吸置いて話し始める。まずは無難なところから。

「今日はお仕事だったんですか?」

「はい、というかこれからまた職場に戻る予定です」

「えっ、そうなんですね、今日は本当に貴重なお時間頂いて本当にありがとうございます」

「いえいえ、立場上、時間の配分は割と自由にできるんでお気になさらず」