そう言ってはみたけど、やっぱり連絡先には家族と倉芝先生の番号も登録されていた。
今日は、携帯を見ていないのかな。
冷静にそう判断した自分にびっくりだ。

私が瀬尾君の連絡先を登録している間、彼の視線が向いていることに気づいて顔を上げた。


「どうしたの?」

「……神様って、いると思う?」

まるで私を客観視している気分になった。
それは私の口ぐせで、よく母に漏らしていたから。

「どうなんだろうね。いるかもしれないよ」

「はは……だとしたら、僕は神様に嫌われているのかもしれないな」


理由が解らないその言葉は、私と連絡先を交換したくないと言っているように思えた。


「私、気に障る事した?」

「違う、違うよ。そうじゃなくて……」

瀬尾君は凄く言いにくそうだった。
口ごもり俯くと、ゆっくり視線を上げる。


「どうしてか寝不足な気がするんだ。でもそれがどうしてなのか微かに心当たりがあるから、何だか不公平だなって……」


全然、分からなかった。
私の理解能力が薄いのかもしれない。

だけど瀬尾君の言い方は主観的で、他人に理解させないようにしているようにも思える。


「寝不足って、今体調悪い?」

「ううん、それは大丈夫。ごめんね」

「謝らなくても。はい、これ返すね。瀬尾君、メールとかできる?」

「できるよ。……ちょっとだけ」

その言葉に甘えて、メールを打った。

『私は高畑可奈です』

それだけ。