王様は、卵を買い直して自分の両親に挨拶に行く、と言い出された。


そして、突然に王様と王子に訪問されて驚く両親に、王様は。


自分を城に引き取り、強さを磨いて、ゆくゆくは戦師になってほしい、とおっしゃった。


……家は裕福じゃなかった。


自分も道場に通いたい、と父親に言ったこともあったけど、やんわりと金銭的に無理だ、と言われていた。


王様にそう言われて、まだ小さかった自分はワクワクして。


即、自分は城に行きたい、と答えた。


ただそうなると、両親とは離れなければならない。


王様は、なんなら家族で引っ越しして来たらいい、家なら斡旋する、と言って下さったけど。


父親が丁重に断った。


息子が認められて、城に迎え入れてもらえるのは嬉しいが、自分は息子にのっかって楽をするつもりはない、と。


自分も頑張って、自力で。


いつか息子に追いつこうと思う……って。


父親のその言葉に、王様は何度も頷いてられたし、自分も嬉しかった。


それでこそ、自分が大好きな父さんだ……って。


あの人は、王様が買い直して下さった卵で、プリンをこしらえてくれた。


それをケイゾウと喜んで食べていたが……あの人は、ぼそりとこう言った。


寂しくなるわね、と。


今でもあの口調、あの眼差しは覚えている。


あの人は……自分や父さんのように、おっきい夢を追いかけるよりも。


貧しくても家族皆で共に笑って過ごしたいという、ささやかな夢を大事にしたいと思う人だった。


それが、悪いことだとは言わない。


むしろ、母親とはそうあるべきだと思う。


城に行くまでは、本当に……自慢の両親だった。