次は少し時間がかかった、まあ30分くらいだったと思う。


漫画が佳境に入って、結構面白くなってきた頃合いだった。


忘れた頃にやって来る、つーか……正直もう若干面倒くさかった。


そんなこちらの事情はつゆしらず、モモ姉はいそいそと嬉しそうだ。


どうせ今から言うことは嘘って分かってる訳だから、誰も本気で相手にしないのに……。


『ふふふ、ほら見てー。

今事務所寄ってきたんだけどね、シンラに手紙きてたの。

なんとシンラのお母さんからー!』


その瞬間シン兄と、シン兄の事情を知ってる自分は凍りついた。


『はい、読んでみてー?』


けどモモ姉はシン兄の家庭事情なんて知らない、悪意がないのは分かってる、でも!


……まずい。


思わずシン兄の方に目をやると、シン兄は自分とアイコンタクトして軽く頷いてくれた。


『……ば~か。

リアリティよりリサーチ、ちゃんとしとけ』


シン兄は笑顔でモモ姉にデコピンした。


そりゃそうだ。


いくら触れて欲しくないこととはいえ、事情を知らない者から言われたくらいで激昂するほど、シン兄は器の小さい男じゃない。


『え……なんで……?』


しかしモモ姉は、サバサバしたシン兄の態度が心底解せない、という顔をした。


あぁあ、せっかくシン兄が笑って流してくれてるのに。


『お母さんからの手紙……嬉しくないの?』


『イサキ、後頼む』


そう言ってシン兄は後ろを向き、部屋を出ていってしまう。


『ちょ……っ、なによぅ、もう……!』


モモ姉は、シン兄が出ていったドアをしばし呆然とみつめていた。


……後、任されたし。


つまりは、モモ姉に話してやってもいいってことだろうから。


若輩者の自分がうまく語れるかなんて分かんないけど、そこは兄貴分への日頃の恩返しってやつで。


『モモ姉、話すから聞いてよ。

なんでシン兄が気分悪くしたか。

多分……今の嘘、後悔するよ』