「でも、何で分かったの?

たしかにユウキ君の話は聞いてたけどさぁ。

それだけで、お母さんに結びつく……?」


モモ姉が聞くとシン兄は、……ちょっと言いにくかったのか、口の奥の方でぼそぼそと言った。


「……その子が作ったパン。

イッセイの奴、ちゃんと詳しく言ってただろ。

クルミ入りでシナモンがきいためちゃくちゃうまいレーズンロール、だって」


「……?」


自分はモモ姉と二人で顔を見合わせたんだけど、ケイ兄は声をあげた。


「あぁ!

お前のお袋さんの!

あれ、うまかったよな~。

あ、こいつな、いっぺん里帰りした時に。

城にお土産にって、お袋さんがパンいっぱい焼いてくれて、皆に持って来てくれたんだ。

で、そん中にレーズンロールが入っててさ……そうだ、お前言ってたよな。

お袋さんのパンではレーズンロールが一番好きだって!」


モモ姉と二人でケイ兄を見た。


ケイ兄も加えて三人でシン兄を見る。


「……ギンギンだよな」


「おう。

……バリバリだ」


「……なんだよ……」


シン兄がたじろぎながら、そのアイコンタクトに抗議する。


モモ姉が代表した。


「シンラ……お母さんのこと、常に気にしてたんじゃない」


「……だよねー。

普通そんだけじゃスルーだよな」


「っるっせぇ。

……しゃあねぇだろ、気になるもんはなるんだから……」


シン兄は赤くなりながらも、否定はしなかった。


「顔向け出来ない息子でも、その好物は。

義理とはいえ妹さんに、ちゃんと語り継いでたんですねぇ……くぅう~母親の愛に泣けますね!」


ウキョウさんが、ぱんぱんと手を叩きながら言った。


「この際です。

そのレーズンロール、皆に買って来て下さいよ」


「はいぃいぃ?」


「あ、それいい賛成!

私も食べたーい!」


「シンラはじめてのおつかい、後輩の実家編ってことで。

あぁあ仕事さえなければ、キャーメラ持って私も追っかけるんですけどねぇ……」


「……ちょっ……いや、そんな、待っ……」


「あぁ心配せずとも、経費はこちらで持ちますから。

私もそこら辺くらいは配慮しますよ。

いや~ウキウキしますね~きっとおいしいんでしょうね~」


「……

……分かり、ました……」


シン兄、諦めたらしい。


たしかにウキョウさんには何言ったって勝てっこない。


ケイ兄が苦笑いしながら、シン兄を小突いていた。