シンラがウェスター国の極意書取得の修行に出る前、だ。


シンラは紙バッグに手紙をいっぱい詰めて持ってきた。


預かってて欲しい、と。


シンラが修行に出てから親父と二人で、紙バッグの中を見てみた。


手紙は全部で30通ちょいあった。


どれも未開封……宛名はシンラの両親、差出人はシンラ。


シンラの手紙の宛先が身元不明になってしまってからは、お向かいのおばさんが保管してくれていたらしい。


おばさんが返してくれたんだろうけど……シンラはこれを、どんな気持ちで受け取ったのだろう。


『……あいつ。

捨てなかったんだな』


開けられていない封筒を両手に幾つも持ちながら、親父がため息まじりに呟いてた。


『そうだな……捨てられる訳、ねえよな……』


これを捨てたら、両親への思いを捨てることになる。


見たくはない、手元には置きたくはないだろうけど、……捨てられるはずがない、と。


「……お前、ひょっとして知らねえんじゃねえか。

この紙バッグん中に、お前の手紙以外に入ってた物があるって」


「……え……?」


「……やっぱり、か。

紙バッグと同じ紙質の紙袋でくるんでな。

目立たねえように、たくさんの手紙で隠すみてえにして中に入ってた。

手紙だけにしちゃあの紙バッグ重すぎるって、気づかなかったのか?」


言いながら、紙バッグからその紙袋を取り出してシンラに渡した。


シンラが息を呑む。


「……アルバム……?」


モモが不思議そうに覗き込み、シンラは怖々とページをめくった。


「……それ、わりいけど親父と二人で見ちまった……」


「……!」


シンラのページをめくる手が早くなった。


昔の写真を見て感傷に浸ってるんじゃない。


確認しているのだ。


自分には分かる、彼が何を探しているか……


「……ねえよ、どこ探しても。

俺も親父と二人で探しまくったけど、1枚もなかった」


シンラが顔をあげて、視線がぶつかる。


こんな動揺しまくったこいつの顔、久しぶりに見た気がする。


「……その後親父にな、止められたんだ。

シンラにはまだ、これは見せるなって」


「……王、様が……」


「おう。

訳は教えてくれなかったけどな。

ただ、まだ早いって。

でも、もうあれから……7年、だっけ?

勝手な俺判断だけど、もういいんじゃねえかなって」