「これはこれは……」


「うおぉう!

もう……ウッキーか、びびらすなよ……」


「王たる者が、なーにを言ってけつかるんですか。

さ、ほら。

行きますよ。

彼にとって、間違いなく運命の選択です。

虎のいぬ間に選択です。

あれ、洗濯か……」


いつの間にやら現れたウッキーが何やらブツブツ言っている、自分とイサキの話を聞いていたらしい。


「……先行っててくれ。

俺、部屋戻ってアレとってくる。

シンラからの預かり物……」


「……そうですか。

なるべく早く来て下さいね。

おいしいシーンを見過ごしますよ」


「……おいしい?」


「や、いや、あまりお気になさらずに。

それでは私は、一足お先に行っておりますから」


ウッキーは、ひょうひょうとした足取りで、あっという間に見えなくなった。


そしてウッキーよりしばし遅れて屋上に到着する。


ウッキーは物陰に隠れているイサキと何か話していたし、渦中のシンラとモモは……たしかにピリピリモード全開だった。


モモがシンラを追い詰めてた、どうしてお袋さんを信じてやらないのか、と。


「あぁもう……あんま責めてやんな、モモ」


イサキにKY言われるか知らないが、黙って見てなんかいられなかった。


シンラもモモも、気まずそうな顔をして振り向いた。


「ケイゾウ……お前、いつから……って、ウーさんまで!」


気がついていなかったらしい、あいつにしちゃ珍しいことだ。


よほど余裕がなかったんだろう。


「これ!

返す時が来たかなって思ってよ」


シンラから預かってたものを掲げて見せる。


古ぼけた、そこら辺にありそうな紙バッグ。


シンラの顔が強ばった。


「……今、かよ……」


「今!

ジャストだろ」


二人の方に歩み寄る。


モモが紙バッグを覗いてきた。


「なに入ってるの?

それ……」


「手紙!

こいつが出した、な」