「……おかしくない……?」


「は?

何が?」


「シンラのお母さん……完全悪い人になってんじゃない……!?」


「……違うの?」


「違う!」


ハッキリと言い切れる確信があった。


「ひどい……城のみんな、そう思ってんの?」


「みんなって……またそんな。

シン兄だってそうだよ、だから……」


「絶対違う!」


イサキが反論してくる前に、部屋を飛び出していた。


「ちょっ……モモ姉!」


「直接聞く、シンラに!」


言い返しながら走って行く。


場所は七割方予想はついていた。


こういう時シンラは、自室に引きこもるよりも外に出たがる。


……事情は分かった。


たしかに、お母さんについての嘘はまずかっただろう。


ただ……シンラの行為が許せなかった。


この見解ではあまりにもかわいそうだ、……シンラのお母さんが。


手紙を書く上で、シンラのお母さんになりきったから?


……違う、そうじゃなくて。


シンラの本心を垣間見たことがあるからだ。


だからこそ、彼はお母さんっ子なんだと思っていた。


お母さんのことが本当に好きなんだなって思っていた、だからこそ、嘘にしようとしたんだし。


……それなのに。


やっとこさ屋上まで駆け上がって、ドアを開けたら案の定、彼は佇んでいた。


その顔を見た途端、謝るよりも先に口から言葉が飛び出したのだ。


「お母さん。

かわいそうじゃない!」