「も~……シンラ、蛇はあんまり好きじゃないって言ってたくせに……」


部屋に帰ってベッドに寝ころびながら、思わず声に出していた。


だけど、自分の頭で考え付く嘘なんて前例もあることだし、たかだか知れてる。


嘘といっても、あまり悪質な嘘はつきたくない。


何か相手を喜ばしつつ、実はそれは嘘でしたー、みたいな嘘がいい。←それで自分も悔しかったし!


「嬉しい嘘……?」


シンラが喜ぶものって何だろう?


そう考えて、真っ先に思いついたのが『お母さん』だった。


「シンラ、お母さんっ子だもんね!

よっしゃ、完璧!」


ベッドから飛び起きて、当たり前だけど見たことも会ったこともない、シンラのお母さんになったつもりで。


遠く離れてる息子に宛てるならこんな感じかな……てな気持ちを込めて、丁寧に手紙を書いた。


我ながらいい出来だ。


「ふっふっふ……見てなさいよ~」


そう、意気込んで行ったのに。


シンラは一瞬驚いて……哀しいような、諦めたような顔をした。


そしてイサキに、後頼むとか言って勝手に出て行ってしまう。


イサキは、やれやれといった口調で話してくれた、シンラの過去を。


城に来た経緯、里帰りしたら家がなくなっていたこと、お父さんが亡くなっていたこと、お母さんが行方不明なこと……


そして、その後に王のお父さんに優しくしてもらったこと、なんとか立ち直ったこと。


「……な、だから。

シン兄には、母親についちゃあタブーなんだよ。

モモ姉だって、つっつかれたくない過去あるんだし……分かるだろ?

そーゆーこと!」


……納得出来なかった。


話は最後まで聞こう、と思ったから途中口は挟まなかったけど。


でも、今の話じゃあ……