「愛桜」

「どうしたの?ケンくん」

「あの人、愛桜の....?」

「...うん、そうだよ」




ケンくんが指したのは道路の向こう側に立っていた皐月だった

皐月は私に気付くと手を振ってくれる

振り返すと道路を渡ってこっちに来てくれた




「愛桜!!」

「皐月。久しぶり、だね?」

「そう、だね?」




久しぶりなのかよく分からないがお互いにそう言葉を交わす

語尾に“?”が付くのは上の理由からである




「愛桜、先帰ってるよ」

「うん、分かった」

「ゔぅ...みおぉ...」

「ハイハイ。行くよ、ヨウ」




ヨウくんを引き摺ってルカちゃんは歩いて行く

服の襟を掴まれてるお陰で苦しそうなヨウくんを見て思わず笑ってしまった




「皐月」

「愛桜...。まだ、かな?」

「うん...まだ、かな。まだ、戻れないよ」

「僕は待てるけどあの人たちがいつまでも待ってくれるなんて思えない」

「うん、そうだね。....急がないと。」




ちゃんと戻るからもう少しだけ待っててね?

そうやって言えば、皐月はしっかりと頷いた


ほんとに、皐月はすごいと思う

記憶を失って、まだ頭の中が整理できてなくてもおかしくないのに

言われたことをしっかりと整理して、こなそうとするんだから