「副担任の中村です。担当は数学です。よろしく」


シンっとした教室に響いた先生の挨拶は、とても簡単なものだった。


少しかすれた低めのハスキーな声で、キレイな横顔に細めの眼鏡がよく似合う。

女生徒に人気があったというのも頷ける。


だけど、眼鏡の奥の瞳は冷ややかで、必要以上に人を寄せ付けない雰囲気を持っていた。



――確かにちょっと近寄りづらいかも…。



それが、私の中村先生への第一印象なのだけど…。


あんなに冷たい瞳をしているのは、何故?


私は、近寄りがたいと思ったその人のことが、たまらなく気になっていた。