やっと書き上げた日誌を持って、職員室に向かう。


――えっと、権堂先生は……いない?


「あの、権堂先生は?」


近くにいた先生に聞いてみる。


その先生は日誌にちらっと目を向け教えてくれた。


「権堂先生は研修に出られたから、それは副担に渡しなさい。」


副担って聞いて、どきんって心臓が脈打った。


始業式から1週間近く経つのに、中村先生とは話したことがない。


ちょっと緊張するな。


でも…。


もしかしたら、先生のこと、少しはわかるかもしれない。


心に芽生えた感情は何?


緊張とは違う何かで、胸がドキドキする。


「どうした?中村先生の席ならあっちだぞ」


いつまでもボーッと突っ立っている私に、さっきの先生が指差して言った。


「えっ?あっ!ありがとうございました。」


私は慌てて中村先生の席に向かった。