ライ【完】

ねぇ、結―――

何を言ってるの?

雷太って誰?

雷太って――――――――――?

『志穂。』

待って。貴方はライじゃないの?

『俺だって――俺にとって一番大切な人は志穂だから。』

ねぇ、ライ。

『よく――覚えているね。歌も、この場所も。』

ねぇ、待って。

『――連れてきてくれてありがとう。』

ねぇ待ってよ!!

私の彼氏は

綺麗な二重瞼で

ギターバカで音楽バカで。

ベースだって何でも弾けて。

出来なかったことができるようになると

いつも私の頭を優しく撫でて

そして、優しい声で言ってくれた。

『志穂――良くできました。』

って。

―――良くできました。

ねぇ、ライ!!

『――必ず迎えにいく。――その時は必ず―』

『一緒に海で歌おうな。』

彼氏との最後のデートだった。

『志穂、また海来ようよ。』

そう言った彼氏に私は笑顔で頷く。

そんな私を見て優しく微笑むと

彼氏は続けた。

『その時は必ず――一緒に海で歌おうな。』

―――森本雷太。

何で忘れてたの―――?

私の一番大切な人。

何で私、今まで忘れてたの―――?