明日、帰らなきゃいけないんだ。

そうライは続けた。

「帰るって、何処に?」

私の問いに彼は

「故郷。」

と言った。

「でも、ライ言ってたよね?1人だって。」

そう言うとライは暫く黙って下を向いていたが

「…でも、帰らなきゃいけないんだ。」

と繰り返した。
 
帰るって…何処に?

行く宛がなくて私の家にいたのじゃないの?

そこで私はある1人の人物が頭の中に浮かぶ。

「…オオハシさんのところに行くの?」

そう問うと

「まぁ、そんなところ。」

とライは答えた。

「そっか…」

ライはうつ向いて次の言葉を待っていた。

私から出される次の言葉を。

私はもう、この後に言う言葉を決めていた。

「ライが言うなら仕方ないね。」

私は笑った。

「ライにも帰れるところがあるって知れて良かったよ。」

私の言葉にホッとした表情を見せたライ。

それでも

何だか複雑そうな表情が浮かんでいた。

「明日、見送りに行くね。」

笑顔で言い切るとライは

ありがとうと

今までに見たことない綺麗な笑みを浮かべた。