「お待たせー!行こっか。」

次の日の朝。

とっくに着替え終わっていたライに

そう言って家を出るのを促した。

「おう。…で、何処行くの?」

ライの質問に元気よく

「海!!」

と答える。

すると

「はぁ!?」

とライからブーイングをくらった。

「海って…今秋だよ!くっそ寒いじゃん!!」

「別に良いでしょ~!高校生の時、彼氏と初めて行ったデートが海だもん。」

その言葉に硬直したライ。

「彼…氏?」

「そ。いちゃ悪い?」

そう聞くと

「悪かねぇけど…」

と言葉を濁した。

「てか、よく覚えてんな。初デートの場所。」

「普通覚えてるよー!当たり前じゃん!」

駅まで歩いている途中、

そんな話で盛り上がった私たち。

「…もしかして、その彼氏ってこの前いってた音楽バカ?」

ライの何気ない質問に私は目を見開いた。

「え!?何で分かったの!?凄い!」

「聞いてりゃそれくらい分かるよ!」

彼はムッとしてそう言った。

お?もしかしてこれは…

「ライ、もしかして、妬いてる?」

「なわけねーだろ!」

全力で否定される。

「本当ー?」

「本当だってば!」

そんな感じに話していると駅についた。

切符を2枚買って電車に乗り込む。

今日は休日だから少し空いていた。

「座ろ?」

そう言って席に並んで座る。

ふと隣を見ると

ライは少し悲しそうな顔をしていた。

「ライ、どうしたの?」

「ん?何でもないよ。」

ライはそう言うだけだった。