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遠くからアコースティックギターの音色が

聞こえた。

こんな時間に何やっているんだろう。

気になって私はその音のなる方へ

覚束無い足取りで歩いていく。

しばらく歩くと

真っ黒の服装に身を包んだ男の人が

お店のシャッターの前で胡座をかいて

ギターを弾いていた。

私はその人の前まで歩くと

その人の前でしゃがむ。

「…こんにちは。お姉さん。」

私に気づいた男の人はそう言って

ギターを弾くのをやめた。

「何やってるの~?」

普段もちろん見知らぬ人に声をかけない。

それでも声をかけようと思って声をかけたのは

そうとう酔っているから。

「弾き語りしてんの。」

そう返答してニカッと笑った男の人。

よく見たらその黒い服装は学ランだった。

えっ?と驚きを隠せないでいる私。

酔っていても良くないことぐらい分かる。

「少年くん、今何時だと思ってるの?」

私の問いに

「12時。」

と少年くんは即答した。

「補導されちゃうよ」

私は少年くんに注意する。

でも

「そんなお姉さんこそ大丈夫なの?めっちゃ酔っぱらってない?」

と少年くんは痛いところをついてきた。

それでも酔っているから

「大丈夫大丈夫~」

とフワフワ答えた私。

「少年くん、帰んなきゃダメだよ?私、送ろうか?」

そう言うと少年くんは

「酔っぱらっている人に言われてもねぇ…」

と言葉を濁した。

確かに酔っぱらいに送るって言われたら

それはそれで心配だ。

「それに俺、帰る場所ないし。」

「え?」

その言葉に思わず聞き返す。

「俺ね、一人なの。」

そう少年くんは寂しそうに言った。

急に訪れた沈黙。

少年くんは何も言えない私に気を使ってか

再びギターをつま弾き始めた。

ふと少年くんの隣を見ると

大きなボストンバックが1つ

置いてある。

―そんな少年くんを放っておけなかった。

「じゃあ、うち来る?」

酔っぱらいは少年くんにそう提案した。