「よぼよぼのおばあちゃんなんか何処にもいないよ。」

そう言って微笑む雷太。

私は嬉しさのあまり抱きついた。

「雷太――――会いたかった…」

泣きながら喜ぶ私の背中を

雷太はあのときと同じように優しく

叩いてくれて。

「俺も。ずっと会いたかったよ。」

と私をきつく抱き締めて

そう言ってくれた。

やっと会えたね。雷太。

ずっとずっと会いたかったよ―――

「…そろそろ行こうか。」

気がついたら私は数十年前、

雷太を送り出した駅のプラットホームにいて。

電車は既に到着していた。

「うん。」

私が笑顔で頷くと雷太は笑った。

そして続ける。

「お前の旦那の許可も取ったし、今から連れ回すからな。海だろ?スタジオだろ?それからショッピングだろ―――」

自己中心的な雷太、久しぶりに見た。

やっと雷太らしい言葉が聞けた。

ああ、これが森本雷太だって。

――なんて、愛しいのだろう。

そう思うと何だか幸福な気分になった。

―――電車に乗り込む前、

私は愛しい貴方の名前を呼んだ。

「雷太。」

「ん?」

私の目を見てちゃんと微笑んでくれる

貴方が本当に本当に愛しい。

旦那に悪いけど

きっと、来世も好きになるのは

貴方だけだから――――

「ネックレスありがとね。」

「おう。」

こうして私たちは

数十年ぶりに手を繋いだ。