なんでもない話をする五十嵐さんに相づちをうちながら、私のことを伝えるか、告白の返事をするか、迷っていた。


五十嵐さんの生い立ちは私と似ていたから、共感できることがたくさんあった。


五十嵐さんなら、今の私を変えてくれるかもしれない。


五十嵐さんとなら、私も前向きになれるかもしれない。


「でさ、整備工場の社長には子どもがいなくて、奥さんが経理とか事務系をやってるんだけど、社長も頭があがんないほど怖くてさ。


社員もみんなビビってんだけど、怖いだけじゃなくて仕事ができるから、逆らえないんだよな」


「あの!」


思わず、少し大きめの声になってしまった。


「美春ちゃん、どうかした?」


食事は終わり、食器も片づけられ、ふたりの間にはコーヒーカップとアイスティーしかない。


「さっきのお返事なんですけど、もう少し時間もらってもいいですか?」


五十嵐さんは安心したように笑うと、


「いいよ」


笑顔のまま、答えてくれた。