桜の季節、またふたりで

手のひらに乗った箱を開けたら、指輪が入っていた。


受け取れないよ、カズ。


本当にごめんなさい。


幸せの象徴のような指輪を手に、一人で考えた。


何も気にしないでワガママを貫き通せるなら、竣くんと一緒にいたい。


だけど、それはカズときちんと別れてからだと思った。


竣くんとカズは、今ごろどんな話をしているんだろう。


もしかしたら、カズの実家近くまで車で送りながら話しているのかもしれない。




翌日の日曜日、自転車を置いてきてしまったディーラーまで再度出向いた。


バス停を教えてくれた営業マンが近づいてきて、


「五十嵐から連絡もらいました。


会えて良かったですね」


と笑ってくれて、ホッとした。


「昨日は本当に失礼しました。


改めて、よろしくお願いします」


緊張がとけて、試乗も楽しめた。