桜の季節、またふたりで

何も言えなかった。


悪いのは、私だから。


「こんなことなら、もっと早く俺だけのものにすれば良かったよ」


そう言うと、カズはカバンから小さな箱を取り出して、私の手をとって、手のひらにのせた。


「今月の美春の誕生日に、プロポーズするつもりだった」


「・・・えっ」


「ほんとは、もっと早くしたかったけど、美春が卒業するまで待ってたんだ。


もう、可能性はほぼないけど、俺とのことも考えてくれよ」


「カズ、私は・・・」


カズは、竣くんの方に向き直った。


「五十嵐さん、美春とやり直すってことは、俺と美春が過ごした時間も受けとめるってことですよ?


俺は、美春が住んでたアパートで同棲してたし、このベッドで美春を抱いたってこともわかった上で、やり直したいってことですよね?」


「そうです」


「・・・わかりました。


五十嵐さん、俺と外で話しませんか。


ほんとは、美春と二人にさせてほしいとこですけど、それは心配でしょうから。


美春、一人でゆっくり考えろよ」


「美春、またな。


車のこと書いてて、わかんなくなったら俺に聞けよ」


男子ふたりは、連れだって出ていった。