桜の季節、またふたりで

カズはベッドに腰かけ、私と竣くんは椅子に座った。


「カズ、本当の気持ちを隠したまま、つきあってごめんなさい」


「本当の気持ちってさ、五十嵐さんのことが好きってことだろ?


そんなのずっと、わかってたよ。


美春がキーホルダーと使えない鍵を大事にしてることも、俺といても時々さみしそうなことも」


「今日、竣くんと再会して、私が一緒にいたいのは竣くんだってわかったの。


カズの優しさに甘えて、利用して、ごめんなさい」


「つきあうことになった時、彼を好きなままでいいって言ったろ?


時間がたてば、いつか俺のことだけを見てくれるって思ったからだよ」


「私も、竣くんを忘れなきゃって思ってた。


でも、忘れようと思えば思うほど、忘れられなかった。


カズへの罪悪感に、何度もつぶされそうになった」


「美春、俺との時間は、五十嵐さんに会うまでのつなぎ?


俺との時間は、全部ムダだったってこと?」