桜の季節、またふたりで

自転車を置いて、エレベーターで5階にあがった。


「ここだよ」


「入っていい?」


「どうぞ」


「おじゃまします」


鍵を開けると、電気がついていて明るい。


玄関には男物のスニーカー。


・・・カズが来てるんだ。


なんで今日に限って、突然来るの?


「美春おかえり、スマホ見なかった?」


スマホ、さわってなかった。


カズが玄関まで来た。


「・・・美春、どういうこと?」


「カズ、実はね、偶然竣くんの居場所がわかって・・・」


「ごぶさたしてます、五十嵐です」


カズは、チラッと竣くんを見ただけで、何も言わなかった。


「で?」


「まさか、こんな形で対面することになるとは思ってなくて」


「だろうな」


竣くんは、黙ったまま私の右隣で待ってくれている。


「あの、カズに話があって・・・」


「とりあえず、入れば」