桜の季節、またふたりで

竣くんは、私と離れるきっかけから今までのことを話してくれた。


「俺の転機は、4年半前の9月に、整備工場が閉鎖されることが決まった時でさ。


美春が高3の時、社長と俺が話してるの聞いたって言ってただろ。


それはたぶん、社長の奥さんが入院して、たぶんもう自宅に戻ることはできないから、工場を閉めることにしたっていう話をしてた時だと思う。


社長は、奥さんのことだけでも大変なのに、工場を売る手続きから俺たちの再就職先の手配まで、全部一人でやってくれた。


奥さんはその年の12月に亡くなって、社長は一人きりになったから、俺たちと一緒に行きましょうって言ったんだけど、社長は悠々自適に暮らすんだって譲らなくてさ。


俺たちはあきらめて、3月に名古屋の寮へ引っ越したんだ。


美春に、本当のことを全部話して、名古屋と遠距離恋愛しようって言いたかった。


だけど、それは美春のためにならないって思ったんだ。