桜の季節、またふたりで

車が出ていき、歩道から店舗の方へ近づいた。


一人の整備士さんが、店舗へ入ろうとしている。


後ろ姿だけど、竣くんだって確信した私は、


「竣くん!」


って、叫んでしまった。


もし違う人でも、振り返ってくれるだろう。


そしたら、竣くんのことを聞けばいい。


私の声に反応したのか、その整備士さんは立ち止まった。


「あ、あの・・・私」


その時、春特有の強い風が吹いて、近くの桜の木から花びらが吹雪のように舞った。


少しずつ近づいていくと、整備士さんが振り返った。


「美春?」


竣くんだった。


「竣くん、ごめんね、私・・・」


花びらが舞うなか、竣くんは、ゆっくり近づいてくる。


「もうすぐあがるから、そこのファミレスで待ってろ」


そう言うと、竣くんは店舗へ入っていってしまった。


今の口調は、怒ってる感じだった。


もしかしたら、この店舗に彼女がいるのかもしれない。


今の竣くんのことを何も考えずに、やみくもに突っこんで自爆してしまった。