桜の季節、またふたりで

まどかも間もなくやってきて、


「美春、これお母さんから。


少しでもいいから、食べて」


まどかのお母さんが作ってくれた煮物は、何も食べていなかった私の胃に優しくて、おいしかった。


母が普段貴重品を入れていた引き出しを開けたら、通帳や印鑑と一緒に手紙が入っていた。


『美春へ


美春には、迷惑をかけっぱなしでした。


本当にごめんなさい。


しっかりしている美春に頼ってばかりいたお母さんを許してください。


お母さんが死んだら、通夜や告別式はしないでください。


火葬だけの直葬でお願いします。


お墓はないので、美春に最後まで迷惑かけちゃうけれど、永代供養してくれる所を探してください。


美春は、私の自慢の娘でした。


美春が産まれた時、桜はもう葉桜だったけれど、花々や青葉がきれいで、美しい春にあやかって美春って名づけました。


美春のこれからの人生が、春のように華やかでありますように。


追伸・美春のお父さんの消息はわかりません。


最後にきた連絡先を残しておきます』