桜の季節、またふたりで

「美春、このネクタイどう思う?」


「うーん、もう少し明るくてもいいんじゃないかな」


「そっか、じゃあこっちにするかな」


「うん、それくらいの方が、顔も明るく見えるよ」


竣くんと会えなくなって1年近くの8月終わり、諏訪湖への旅行で斉藤さんとつきあうことになり、それから更に1年3ヶ月くらい過ぎた。


斉藤さんは、私を『美春』と呼ぶ。


私は、斉藤さんを『カズ』と呼ぶ。


斉藤和真(さいとうかずま)だから、カズ。


いつのまにか、敬語も使わないで話すようになった。


カズは、小学校教員を目指していて、4月から大学4年になる前にスーツやネクタイを新調したいからって、二人で買い物に来ていた。


今は11月で、今年は冬の訪れが遅いせいか、まだダウンを着ていない。


大学デビューした私にも、いろんな変化があった。


車の運転免許も取ったし、ピアスもあけた。


ネイリスト修行中のまどかに、1ヶ月に1度、練習台も兼ねてネイルをお願いしてる。


2時間半くらいかかるから、そこでお互いの近況報告をしあう。