あの人に初めて会ったのは、高2の始業式だった。


その年の桜は開花が遅れていて、ちょうど桜が散り始めていた。


小さい頃は、ひらひらと舞う花びらをキャッチできたら、願いごとがかなうと信じていた。


今はもう、かなわないと知っている。


願いや希望や夢なんて、もつだけムダだと知っている。



「美春、今日もバイト?」


背後から騒々しい声が追いかけてきた。


声の主は、木下まどか(きのしたまどか)という同級生。


明るくてオシャレで化粧がうまくて友達が多くて、今を満喫しているイマドキの女子高生だ。


まどかは中学から一緒で、表面上は仲がいい。


コンビニのバイトも一緒だし、まわりからは親友だと思われているだろう。


私、神田美春(かんだみはる)は、まどかとは正反対だ。


地味でダサくて化粧に興味なくて友達がいない、すべてをあきらめている無気力な女子高生だ。