家政婦は、にこやかに手を振っていた。
しかし、あたしには見えなかった。

「いっけなーい!電車に遅れちゃ~う!」

あたしは、車に乗って行ったっていいんだけど、こっちの方が目立たないからって、お父様が言っていたのよ。

学院の最寄りの駅に降りると、見覚えのある後ろ姿を見つけた。

「忍君~!」

「……………」

いたいた。
あたしの、運命の人。

毎朝、会える、あたしの、世界で一番大好きな人-