足が痛い、喉が痛い、走るのをやめたい!
でも、今走るのをやめたらきっと捕まる
走らなきゃ、走らなきゃ!
あそこを出たのは真夜中の丑三つ時。
今は太陽が顔を出そうとしてる。
霧が濃い。あいつらも今だと見つけづらい。
その間に早く逃げなきゃ!

『ドン!』

何かにぶつかったときの拍子に尻餅をついてしまった。
人?
「ごめんなさい。急いでいるので失礼します」
そう、謝るとまた走ろうとしたが、
ぶつかった人とは別の人に持ち上げられた。
「そんなに急いでどこへ行く。お前は誰だ」
ああ、めんどくさい。
「私は立川美海と申す者、今はある者から逃げている最中でございます。」
素直にそう言うとぶつかった人が…
「立川美海?もしかして、10年前誘拐された」
なんで?
「なぜ知っておられるのでしょうか?」
「斎藤一と言ったら分かるか?お前の兄弟子の」
斎藤一…?あ…
「もしかして左利きの」
「ああ、そうだ。なぜあの頃と姿が変わっていない」
「それは、ここ10年、まともに飯を食べていないからです。それに、外に出た事はあの日から今日がはじめてです。とりあえず、原田さん、下ろして下さい。逃げませんから」