その日の放課後、私と優希乃は今、2組のドアの前にいる。


2組の教室はドアを閉めててもわかるくらい、うるさい。


男子がギャーギャー騒いでてこの中に入るのかと考えるだけで嫌になる。


…さっさと部活にいけよ。とか思うけど現に私も行ってないから人のことは言えない。


「ゆ、優希乃?この中入るの??」


「んー、さすがに、うるさいね。ここから呼ぶか!」


そういうなり、優希乃はドアを勢いよく開けて


「おーーい!あーーおーーーー!!」


と、男子に負けないくらいの声でその人の名前を呼んだ。


あ、お?


そんな人いたっけ?など思いながら見てると、
そのうるさい男子の輪から1人、こっちに向かって走ってくる。


その人は私と一瞬目があったけどすぐ優希乃の方に向き直った。


「なに、優希乃。」


「はい!」


優希乃はそう言いながら少し後ろにいた私を無理やり前に押し出した。


「…は、はい…?」


ほら。全然何も掴めてないよこの人。


「あおが持ってる本を読みたいって子がいたの。ほら、この前バスで読んでたやつ。」


「あぁ!あれね。いいよ。今持ってないから明日貸す。えっと…」


あ!自己紹介だ!忘れてた。


「ゆ、有川桃、です。」


「俺は杉本蒼。よろしく!」


「うん!よろしく。蒼くん。」


「あ、呼び捨てでいいよ。俺は 桃 って呼ぶから。」


普通に、悪い人ではなさそうだな。


むしろ、いい人。


友達がひとり出来て、それにプラスして本まで読める!


なんかすごいなぁー。


「あの本、すきなんだ?」


「うん!ずっと読みたいーって思ってたけどなかなかなくて…」


「だよなー!俺も探すの苦労した!!」


「お疲れ様ー笑」


仲良くなって、そんな他愛のない話を続けていると、廊下から、


「おい、いちねーーーーーん!はよ部活いけーー!!!!」


先生が超大きい声で怒鳴ってる。


「や、やばーー…じゃあ、俺もう行くな!」


「うん!」


「桃!また明日ー!」


蒼はすごいスピードで出ていった。


「…ももちゃん、どうだった??」


私のカバンを持ってきてくれた優希乃は、感想を求めているよう。


「んー、悪い人ではないね。蒼って、何部?」


「あ、あいつはバレー部だよ。体育館行ったっぽいね。」


「へぇ〜」


「よし!私たちも音楽室早く行こ?」


「そうだね!!!いそげーーーー!」


その後、遅れてきた理由を顧問に聞かれて何も答えられなかった私たちは、




怒られました。