いつの日にか思う様になったのだ。リルは…

自分の先祖の人間の様に、何かが海面から降りてこないだろうかと…

どのようにして最後の海竜と最初の魚女が縁(えにし)を結ぶ事になったのか、心話(ロゴス)でしか語り合わない海竜は何も教えてくれない。

そのうちリルは酸素で満たされた、座り込んだ成人一人サイズの泡(あぶく)を操る事が出来る様になった。

居城より離れた所にある難破船の残骸から拾った航海日誌を泡の中で開き、読めないスペルを頭に泳がせながら、日誌の手描きのイラストの美しい人に何かしら思う。

それは心話ではなく声という道具で想いや知識を伝えたいという熱い欲求に変化した。

美しい海底で美しい居城で美しい海竜に守られた。聖なる魚女の願い。