私がゆっくりと爽太へ近づくと
爽太も私のほうを向いたのが分かる。





そんな彼の頬にそっと触れれば
何かが私の手へと落ちてきた。






それは一瞬暖かさを感じたものの、すぐに冷たく変わって、私の手を伝いこぼれ落ちる。







「爽太?泣いてるの……?」






そんな私の言葉に爽太はなにも答えず
その代わりに二つの腕が私の腰へと周り
爽太の方へと引き寄せられ、
お腹周りに重みがのしかかった。




今までこんな姿を一度も
見たことがなかった私は
戸惑いながらも、もう一度名前を呼ぼうとしたが、その言葉は発せなかった。






私は気づいてしまった。

爽太と私が触れている部分から
微かな震えが伝わってきたのが。