「……か、薫くん」 振り向くと、驚いた顔をした薫くんが立っていた。 いつものかっちりしたお洒落な私服ではなくて、Tシャツとパーカー、大きめのスウェットパンツといった完全にオフモードの姿だった。 長い前髪はバレッタでまとめ上げられていて、先ほどシャワーを浴びたばかりなのか髪の毛は少し湿っているようだった。 その手には財布と、水の入った未開封らしいペットボトルが握られていた。