「女だろうが男だかろうが、優衣ちゃんに触れたと思うと吐き気がする」
「……薫くん、キャラ保ってください……」
目元に影を落として吐き捨てるように言った薫くんにゾッとして目を逸らすと、ごめんね?といつもの優しい声が返ってきた。
コップの中に残った薬液を水に流すと、薫くんがこれまたどこから取り出したかわからないハンカチで私の唇を軽く叩くようにして優しく拭き上げる。
「ん。これで大丈夫かな」
仕上げと言うように薫くんは自然な動作でリップを取り出して、キュポンと音を立ててキャップを外した。
「あの、そのリップ」
「うん?俺のだよー」
間延びした呑気な薫くんの声。
唇にリップクリームを塗られながら言葉の意味を理解して、赤面した。



