「……何で持ち歩いてるんですか……」 ついでに顔を上げれば、連れてこられたのは水飲み場だった。 懐かしいなぁ、この感じ。 二年前までは私も高校生だったんだけど。 「風邪予防に。アイドルは身体が資本だからね」 シンクの上にいくつか置かれているコップの一つを差し出されて、私は仕方なく薫くんの言うことに従うことにした。 「ちゃんと消毒してね」 「何もそこまでしなくても……」 そこまで言いかけて、少し怒った雰囲気の薫くんに気が付いて口を閉ざした。 うがい薬と水を適量で割って、口の中をゆすぐ。