「……北原、さん」



機材やセット、スタッフでごった返す教室内。


撮影は夕方の教室で行われるとのことで、各自撮影に向けた準備をしながら日が沈んでいくのを待っていた。


私も廊下から撮影を見守ろうとしていたのだけれど、なぜか北原さんがわざわざ私の目の前まで来たのだ。

思わず思考も動きも止めてしまう。



「その様子だと全部知ったのね」



少し疲れたような顔の北原さんがため息混じりにそう言った。

城谷さんのことや北原さんと薫くんのこと――色んなことを含めての、その言葉だろう。



「ごめんなさい」



何を言われるんだろうと身構えていると、面食らった。

意外にも、彼女はあっさりと私に頭を下げたから。