映画の撮影がいよいよ最終局面へと突入した。

あとは薫くんと北原さんでクライマックスのシーンを撮り終えたらクランクアップだ。


桃山さんと東雲くんは既に出番を終えて、別の仕事に行っている。

そちらの方が落ち着いたので薫くんの撮影現場にも顔を出したのだけれど、到着して早々私は足を止めることになった。



「……北原、さん」



機材やセット、スタッフでごった返す教室内。

撮影は夕方の教室で行われるとのことで、各自撮影に向けた準備をしながら日が沈んでいくのを待っていた。

私も廊下から撮影を見守ろうとしていたのだけれど、なぜか北原さんがわざわざ私の目の前まで来たのだ。


思わず思考も動きも止めてしまう。