「どんな薫くんでも、薫くんは薫くんだから」



薫くんのまとう空気が震えたのがわかって、私は目を閉じて彼の服の裾を掴んで身を寄せた。


薫くんは今も昔も変わらずに泣き虫だ。


薫くんの親友である逢坂くんが、薫くんは私が思っているより完璧な男ではないと言っていたことも、今では本当の意味がわかる。

でも、だからといって嫌いになったりしないし幻滅したりしない。


上手く言葉にできないけれど、薫くんの全部が好きだからどんなことも受け止めたい。


彼の寂しさで傷付いてぽっかり空いた穴を――私にも、誰にも、隠したかった過去の彼を。