ライブ会場から少し離れた部屋。

関係者しか入ることのできない、スタッフの控え室のように割り当てられた個室に私は逃げ込んだ。


手足から力が抜けて床にへたり込む。

確かに私に向けられた薫くんの切ない表情と瞳が脳裏に焼き付いている。

言いようのない恐怖と不安が襲ってきて、私は自分を抱き締めるようにして身体を縮こませた。



「白戸さん」

「ひっ――」



ポン、と肩に手を置かれて驚いて床に這いつくばるようにのけ反ってしまう。

乱れる呼吸を軽く整えて顔を上げると、そこには心配そうな顔をした城谷さんが私を見下ろしていた。



「大丈夫?顔色が良くないけど……」



今ここに現れたのが薫くんでなくて良かった、とほっとして息を吐く。


少しずつ動揺も治まってきて私はにっこりと笑顔を作って大丈夫です、と答える。

それでも城谷さんは納得していないのか、探るように私の瞳の中を覗き込んできた。