「薫くん、私」 私が沈黙を打ち破って、言葉を発した直後――薫くんは何も言わないで欲しいと言うように、私の唇に指先を当てた。 「ライブが終わったら、話したいことがあるんだ」 話したいことって、何――? 聞きたくて、でも聞ける雰囲気でもない。 心臓がうるさく脈打つのを押さえ付けて、私はぎこちなく頷いた。 薫くんの口から直接別れを告げられるのだろうか。 泣きそうになるのを堪えて、私は会場に向かう薫くんの背中を見送った。