いつの間にか出番待ちの城谷さんが私の目の前に立っている。

少しだけ驚いたものの、それを顔や態度に出して表現できるほど今の私には元気が残ってなかった。


残った気力でなんとか笑い返すと、城谷さんが中身の入った紙コップを差し出してきた。

小さくお礼を言って受け取ると、城谷さんが困ったような顔をして私の顔を覗き込んだ。



「砂川君と喧嘩した?」



いつもの私なら大げさに肩を揺らして反応する言葉も、今の私は不自然なまでに固まってしまった。

その反応に城谷さんは眉間のしわを更に濃くしてバツが悪そうに自分の首に手をあてた。



「ごめん、たぶん俺のせいだよね?不用意に俺が君を誘ったからだ」


「いえ。城谷さんのせいじゃないんです」



私がもっとしっかりしていればこんなことにはならなかった。

その意味を込めてゆるく首を横に振ると、私の手のひらに握られた紙コップの中身に波紋ができる。


ふと、瞬きをすると少し遅れて頬に冷たさとなぞるようなくすぐったさを感じて自分が泣いてることに気が付いた。